1時間の音楽プログラムでジャンルを分け隔て無く楽しんで頂けるのが嬉しい。それが、こばとからのお願いです。癒しのひとときお届けします。
成人の日の深夜1時から、フルトヴェングラーのドン・ジョヴァンニがハイビジョン・リマスターでNHK BS-2で放送。(2010年12月25日土曜日の夜11時から、Bs-hiでハイヴィジョン放送された内容です)。オーケストラはウィーン・フィル。1954年のザルツブルク音楽祭での演出、上演を映画にしたもので出来の良さは良く知られた作品。フィルムの劣化か、フィルムをテープに写したものをデジタル・リマスターしたものかカラーのにじみなどはなく鮮明ですが画素数が低い印象があります。
しかし、内容は「ドン・ジョヴァンニ」演出の教科書のようなもので、映画「アマデウス」のドン・ジョヴァンニ上演のステージはそっくり。しかし、映画「アマデウス」での焦燥しきったモーツァルトの表情はフルトヴェングラーは一切見せていません。ともかくもかの世代の男性は生気溢れて体力も充分に備えているようです。オペラ座のオーケストラピットだから、コンサートでの大振りな指揮姿ではなくて顔の表情は変わらなくても眉の表情で音楽に表現をつけています。
映像と音楽、歌声は別々にとられたものを編集で合わせたもののようです。映像での歌手たちの息づかいと歌声には合わないところがあるので演奏場の破綻はなく上質。チェーザレ・シエピのドン・ジョヴァンニは戦後のドン・ジョヴァンニの演技にはない上品さがあります。昭和の時代にはマドロスへの憧れを女性は持っていました。蝶々夫人を引き合いに出すまでもなく、戦争の後、女性の性意識は変わったんじゃないかしら。いや、世間が上手い具合に差し替えてしまったようです。ドンナ・エルヴィラはドン・ジョヴァンニを恨んでるような歌われ方をしていない。貴女はまだ世間知らずだから・・・って、見方が出来るくらい。きっとそれでドン・ジョヴァンニも立ち位置が変わってしまったのでしょう。
ドンナ・エルヴィラを歌う、デラ・カーザのソプラノは出色。可憐さと激しさが同居していると表現したらいいでしょうか? 声は良く通っていてシャープ、なのに華奢な役どころを感じさせてくれています。流石に現在のソプラノ歌手が忘れてしまった何かがあります。何かって、それは歌声の艶、歌声の表情。演技力の良いソプラノは最近多くなったけれども、歌い方は大時代に戻ろうとしているようですね。
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